ウルフウォーカー



アイルランドのアニメスタジオ、カートゥーン・サルーンがケルトの伝説をモチーフに描く『ブレンダンとケルズの秘密』、『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』に続く3部作の最終作として贈る長編ファンタジー・アニメーション。監督は、前2作も担当したトム・ムーアと、『ブレンダンとケルズの秘密』では美術監督を務めたロス・スチュワート。

中世アイルランドの町キルケニー。イングランドからオオカミ退治のためにやって来たハンターを父に持つ少女ロビンは、森の中で出会った少女メーヴと友だちになるが、メーヴは人間とオオカミがひとつの体に共存した「ウルフウォーカー」だった。魔法の力で傷を癒すヒーラーでもあるメーヴと、ある約束を交わしたロビン。

それが図らずも父を窮地に陥れることになってしまうが、それでもロビンは勇気を持って自らの信じる道を進もうとする・・・。

舞台はアイルランドのキルケニー。カートゥーンサルーンはキルケニーにあります。何でもアイルランドの中で狼の伝説があるのはこのキルケニーだけなんだとか。つまりは地方に伝わる御伽噺を映画しているわけです。

 北欧では17世紀頃からオオカミは狩猟されてしまい絶滅危惧種になっていました。しかしアイルランドだけは「ウルフランド」と呼ばれるほど人間とオオカミは共存していたんですね。アイルランドはオオカミを神格化した文化を持っていました。

 もう一つ時代背景を知っておくならオリバークロムウェルのピューリタン革命、その中で行われたアイルランド侵攻ですね。この辺を語ると映画から離れてしまうので止めますが、早い話クロムウェルは現代でもアイルランドではめちゃくちゃ嫌われ者です。そして本作の悪役の護国卿はクロムウェルがモデルです。

 絶対的権力と武力を前にして、人はどう成長できるのか、という主題がありました。メーヴ達狼族は人間に対して、ロビンは父、ビルに対して、ビルは護国卿に対して、それぞれ力で支配されている状況です。

ある事をきっかけにその支配から抜けようとします。メーヴは母のため、ロビンはメーヴのため、ビルはロビンのため、これまで禁忌とされていた事に踏ん切りを付けるのですが、その描写一つ一つが丁寧でキャラクター各々を好きになってしまいます。個人的には父ビルの描写が好きで、一兵士としてアイルランド侵攻し、村民を支配する事もとても後ろ向。

娘の事ばかり心配し、護国卿にも逆らえません。そんなビルの成長がサイドにあってこそ、少女2人の成長がよりはっきり分かるものとなっていました。

 本作の悪役、護国卿ですが。まあ悪役らしくクズ人間なんですよ。支配層に位置する人間は何に支配されるのか。それは神なんですね。彼もまた崇拝と支配に怯える人間の弱さを見せてくれました。

そしてこの人、クズだけど卑劣じゃないし潔いんです。ただのクズなら良かったんですが、彼は為政者、そして武人でした。そんな一筋縄ではいかないキャラクター設定が、この映画の深いところ。

キャスト

監督:トム・ムーア、ロス・スチュワート

出演:オナー・ニーフシー、エヴァ・ウィテカー、ショーン・ビーン、マリア・ドイル・ケネディ、サイモン・マクバーニー

脚本:ウィリアム・コリンズ

原題:Wolfwalkers

上映日:2020年10月30日

製作年:2020年

製作国:ルクセンブルク、アイルランド、アメリカ

時間:103分

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