やがて海へと届く

やがて海へと届く

引っ込み思案で自分をうまく出せない真奈は、自由奔放でミステリアスなすみれと出会い親友になる。しかし、すみれは一人旅に出たまま突然いなくなってしまう。あれから5年―真奈はすみれの不在をいまだ受け入れられず、彼女を亡き者として扱う周囲に反発を感じていた。ある日、真奈はすみれのかつての恋人・遠野から彼女が大切にしていたビデオカメラを受け取る。そこには、真奈とすみれが過ごした時間と、知らなかった彼女の秘密が残されていた…。真奈はもう一度すみれと向き合うために、彼女が最後に旅した地へと向かう。

浜辺美波は社会を上手く生きながら、孤独を抱える人物をよく演じるな。
『思い、思われ、ふり、ふられ』でも同様に、全体の空気を読みながら、自分の気持ちを押し殺して、上手く取り繕う役を演じていた。
今作でも同じように、自分の気持ちは見せずに、上手く立ち回る。
けど、常に何かと戦っているのを隠していることがわかる、少し冷めた眼差しがとても印象的。
私も人にはあまり自分のことを相談できないタイプであるから、自分のことを聞かれると困ってしまう気持ちは良くわかる。
だからこそ、誰にも助けを求められず、死に向かってしまうのかもしれない。

映画の大きなカギとなる「海」は死のモチーフでもあるが、生のモチーフでもある。
大きく自分たちを受け入れてくれるような存在でもある。
主人公2人はそれぞれが相手からしたら海のような存在だったんだと思う。
誰かの存在が、思い出が、生きる糧になっていることを劇中震災の被害者の方の映像で語られる部分がある。
浜辺美波を亡くし、喪失感を抱えていた岸井ゆきのも、浜辺美波との思い出を胸に前へ歩き出す。
でも、人って意外とそういう楽しかった思い出とかを糧に生きている。
日常が辛くても、あの思い出の様な経験がまたできると考えると、頑張れる。
人生に明確な目標がなくても、楽しかったことがたくさんあったから生きていけることってたくさんある。
だからこそ、自分の気持ちを出さない人たちの気持ちを汲み取って、幸せな時間を与えられることができれば良いなとこの映画を観て感じる。
簡単なことではないと思うけど、一緒にたくさん過ごしていき、楽しい思い出を作ることで、その壁を取っ払い、生きやすい環境を作ってあげられたらと思う。

丁度、芸能人の方が亡くなったニュースが報道されて、人は本当に世界の片面しか見れていないことを気付かされる。
自分の気持ちを押し殺して、明るく生きる人ってある程度そういう部分も人に伝わっていると僕は感じていたが、意外と全く伝わらない人も大勢いるのかもしれないと感じる。
けれど、楽しい思い出を少しでも多く作れたら、すごく理想論かもしれないけど、そう思う。

キャスト

監督:中川龍太郎
出演:岸井ゆきの、浜辺美波、杉野遥亮、中崎敏、鶴田真由、中嶋朋子、新谷ゆづみ、光石研
脚本:中川龍太郎
原作:彩瀬まる
上映日:2022年04月01日
製作年:2022年
製作国:日本
時間:126分

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