大きな正義感と小さな嘘で狂ってゆく人生の行方は――。
借金にあえぐ男に舞い込んだ千載一遇のチャンス。 イランの古都シラーズ。ラヒムは借金の罪で投獄され服役している。そんな彼の婚約者が偶然にも17枚の金貨を拾う。
借金を返済すればその日 にでも出所できる彼にとって、まさに神からの贈り物のように思えた。
しかし、罪悪感に苛まれたラヒムは落とし主に返すことを決意。そのささやかな 善行は、メディアに報じられると大反響を呼び“正直者の囚人”という美談の英雄に祭り上げられていく。
ところが、SNS を介して広まったある噂をき っかけに状況は一変。周囲の狂騒に翻弄され、無垢な吃音症の幼い息子をも残酷に巻き込んだ大事件へと発展していく。
SNSで広まる噂で信頼していた人々から疑いの目を向けられ、状況が一変する主人公ラヒムを描いたという作品。SNSの断片的な情報の不条理がこの物語の見どころだと思う。けれども、僕が興味を持ったのは映画に描かれているイランの人々の様子と独特の習慣。
この映画に描かれている人々はイスラム教徒の人々だと思うけど、街の様子も恋愛の感覚も僕たちの日常とかけ離れていないなぁと感じた。特に、エンディング近くで、ラヒムの婚約者ファルコンデがラヒムとの結婚を反対された時、家族を捨ててでもラヒムを愛すると叫ぶシーンは、僕にとってのイスラム教の世界とは別のものだった。反対にラヒムが自分の(あるいは家族の)「名誉」を守ることを一番に考えて疑いを晴らそうとしているのは、イスラム的な意識なのかなぁと感じました。
キャスト
監督:アスガー・ファルハディ
出演:アミル・ジャディディ、モーセン・タナバンデ、サハル・ゴルデュースト、サリナ・ファルハディ、フェレシュテー・サドル・オーファン
脚本:アスガー・ファルハディ
原題:A Hero/Ghahreman
上映日:2022年04月01日
製作年:2021年
製作国:フランス、イラン
時間:127分